※1 これは「山田定跡は嘘だった?」の続きです。
※2 この文章は、将棋の知識(それも少々古い知識)がないと、面白くも何ともありません。
前回、昭和に将棋を覚えた人ならば誰でも知っている対四間飛車「山田定跡」をAIで検証したら、そもそも△3六歩ではなく△4五歩が最善なことが分かった。
それだったら、山田定跡の三間飛車Verも怪しいのではないか。 特に▲3三角って怪しくないか?
新しい振飛車戦法(山田道美著)

老将棋ファンならば、アマプロ問わず皆様も一度はこのような局面を見たことがあるだろう。その後、△4七歩▲同金△4六歩▲5七金△6五桂▲5八金引△4七歩成▲同銀△4六歩▲3八銀△4七角▲2七竜だったか、「後退できぬ駒はない」というマゾな手が続く。
どう考えても、▲3三角が最善とは思えないけれど、昭和の棋書の多くが、この▲3三角を絶賛している。検証してみることにする。
実は私、当時の棋書を全て捨ててしまった。しかし、どういうわけか「新しい振り飛車戦法(山田道義著)」だけが、古本屋に持っていけば売れると思ったのか、残っている(将棋精華も持ってる)。
もっとも今見たら、この本の発行は山田道美が夭折した1970年(昭和45年)の5年後の昭和50年に発行。しかも山田道美ブランドが色褪せた今現在、いくらで売れるのか定かではない。
ただし、この本では、基本図のの定跡よりも1手▲6八銀と待つ手を推奨している。更に、端歩が微妙で、先手が▲9六歩と突いても後手が突き返さない現象(端攻め警戒)が説明されており、いる。
そして、基本図のの定跡も、上記ではなく端歩が全て付き合ってない形で紹介されている。



端歩ありは▲9五歩、端歩なしは▲4六歩で先手かなり有利
前回同様にポンタマンで持ち時間は名人戦と同じ9時間で検索させた。
結論から言うと四間飛車ではダメ出しされた山田定跡、三間飛車では▲3三角はあまりおすすめでないけれど、実に優秀な戦法であることが分かった。
しかも、この端歩が絶妙なのだ。
基本図の一手前、△7二銀の局面で
端歩突き合いありは▲9五歩 端歩突き合いなしは▲4六歩で先手良し。
しかも、評価値ではどちらも既に1000点近い差がついている。AI同士では既にオワコンだったのだ。




ちなみに、その後も指し続けさせると、どちらもゆるやかな藤井曲線を描いている。



しかも、9筋を付き合わない形で▲4六歩と打った局面で、以下△4三飛▲6六角△1三香。一筋の端歩も突き合ってなければ最後の△1三香の香車脱出もなかった。
偶然かもしれないけれど、端歩の交換をしないのは大正解のようだ。いや、偶然ではない。前述「新しい振り飛車戦法」には、定跡説明と別枠で、美濃囲いの崩し方コーナーを作って、端攻めのテクニックを説明しているのだ。おお、さすが昭和のカリスマ、悲劇の天才山田道美。
人類も馬鹿じゃなかった。初心者の勘は正しかった
実は、もう少しいろいろと遊んでみた。ただ、前述のように両方の端歩がちょっと変わるだけで、形勢が変わる可能性があるので、参考ということで簡単に書いておく。

少し前に戻して、先手が▲4五歩と仕掛けた場面(図1)。
ここでの正解は△2ニ飛で、以下「9時間かけっぱなし」にしておくと、けっこう互角の形勢が続く。しかし、△4二飛とやると評価値がビヨーンと下がって、居飛車が500点近く優勢になる。
要するに、この形の「昭和の常識」だった「攻められた筋に飛車を振れ」は、AIポンタマン的にはヘボ筋らしい。また、お互いに桂馬を入手する可能性が高く、そうなると▲9五歩が必殺になる可能性が高く、振り飛車は9筋の端歩は付き合わないほうが大得のようだ。

図1から△2ニ飛

図1から△4二飛
振り飛車には角交換を狙え

現実問題、定跡書でも、後手三間飛車側が銀を4二で待機して飛車は2二に回り、先手は▲5五歩△同歩▲4五歩から垂れ歩して銀桂交換を狙う展開になっていると思う(リンク先・図3参照)。
そして平成も終わり令和の今、銀は△3一に据え置くのが常識になる一方、先手の急戦策も5筋の歩を突かない「へな急」が主流になっている。
そして安定の「左香車1個上がり戦法」だけは昭和の昔から健在。四間飛車同様に、三間飛車でも山田定跡はオワコンのようだ。
しかし、初級者時代、みなさんの中に、居飛車が角交換して飛車を成った局面は先手優勢にしか思えなかった人は多かったのではないだろうか。もちろん当時の棋書には「それはお前が弱いからだ」と一蹴される。しかし何てこっちゃない、AIさんは初心者感覚と同じだったのだ。
飛車を一方的になれば優勢。でも、▲9五歩も▲4六歩も、見覚えがあるんだよなあ。気のせいかな?



コメント
57銀左とあえて守備の銀を上がるとか飛車先不突矢倉とか一見棋理に反していることも網羅しているというのが『現代将棋』。これが当時の認識だったのでしょうが…。
なるほど、です。
そう言われてみると、いかにも人間らしい発想です。
常識を疑え。
そうやってAI前の将棋は進歩してきたのでしょう。
「5五の位は天王山」とか、「矢倉に端歩は突くな」とか。
平成になっても、初心者棒銀の銀のルートが2六ではなく3六になっただけで、数々のタイトル戦に登場する戦法になった。
しかし、まさか「桂馬の高跳び歩の餌食」まで怪しくなるとは。矢倉、6手目辺りから怪しいらしいし…